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4.72023
法務局は市民のミカタ
私が目にした資料によると、平成29年の統計では、1年間で亡くなった方のうち、遺言を残しておかれたのは1割程度だったそうです。
外国に目を向けると、たとえばイギリスでは55歳以上の国民の6割が作成済みだということですから、お国柄というのはありそうですね。
今回は、ドラマなどで目にする「遺言を書くシーン=自筆証書遺言」についてお話してみます。
どうやって作ればいいかわからない…
繰り返し この言葉を 使いますが、「お作法」というものが 遺言にはあります。
なにしろ本人が すでに亡くなっていて、書き残した内容が 間違いないかどうか、立証するのが とても困難な「遺言」。
前の記事にも 書いたとおり、「遺言は故人の財産を分配するルール」について 記したものですから、遺族間のもめ事との縁は…浅くありません。
ですから、争いになった際にも戦えるような、ツッコミどころのない書類である必要があるのです。
信ぴょう性を高め、内容の解釈に 異論が噴出しないようにするために、どうしても 一定の決まり事(要件といいます)を 備えている必要があるのですね。
逆に言うと、「お作法」さえわきまえていれば、チラシの裏側に 書いてあった遺言でも、実は有効なんです。
どんな「お作法」?
契約書のような 文書の作成に慣れている人であれば、この「お作法」は、さほど難しくありません。
けれども、たいていの人にとって 遺言は、決意を胸に 初めて書く文書。
しかも、遺言書を書くときに相談する相手って、身近に思い浮かびませんよね。
だからこそ余計に 気後れするし、せっかく書いた遺言でも チェックが甘く、効力が認められないというのは 悲劇でしかありません。
大事な遺言が 無効になりかねない「お作法」としては…
- 自分自身の肉筆であること(財産目録などは印字でもOKになりました※)
- 日付があること
- 印鑑が押してあること
程度のことです。
あとは使う用語など、ある種の体裁を 整えることで、解釈違いを 遠ざけることも「お作法」と言えます。
やっと遺言完成!さて、どこにしまおう・・・
自分で作成した遺言をどこに保管するか。
じつは案外、やっかいな問題なのです。
誰にも相談できなかった、という背景には、存命中は内容を知られたくない…というのもよくあること。
だから、自分の机の引き出しやタンスの中など、あまり家族の目につかない場所にしまうのが多いケースだと思います。
しかし、仮に自分の死後に、相続人たちがモメそうな場合。
典型的な保管場所を察知した相続人が、遺言の内容を改ざんする、という無情な事態も考えられるのです。
逆に、そうした事態を恐れて、わかりにくい場所に隠しておいたとしたら…
今度は誰にも見つけてもらえず、自分の要望が実現しないまま「遺産分割協議」が始まってしまいます。
こうしたストレスから解放されるため、私は法務局で令和2年から行っている「自筆証書遺言書保管制度」の利用をお奨めしています。
こんなに便利「自筆証書遺言保管制度」
端的に言って、メリット満載で 自筆証書遺言なら この制度利用一択です。
- 改ざんのおそれなし
- 「お作法」のチェックが期待できる
- 安価で利用できる(3,900円)
- 死亡時には通知もしてくれる
- 検認が不要!
以上のサービスを 法務局では行っています。
不動産や 抵当権の登記などでしか 日常生活では関りがない法務局ですが、しっかり市民向けの サービスを行っていると 思いませんか?
とは言え、以下の点には 注意です。
- 作成した本人が 写真付き身分証明書を 法務局に持参すること(同伴はOK)
- 必ず 事前予約が要る
- 遺言の内容についての相談は 一切ダメ
- A4サイズの 決まった様式に 則って作成すること
本人持参については、認知症などによる 判別能力低下の疑いを 払しょくする点から言えば メリットとも言えます。
内容についての相談は、岡目八目とは よく言ったもの。
私ども士業のような「他人」を噛ませたほうが、物事を整理するのには 便利な面があると言えるでしょう。
当事務所では、法務局指定の様式に沿った遺言用紙を 備えています。
思い立った場合はお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。