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3.302023
遺言と能楽ドラマ
私は、学生時代から「能楽」のお稽古を 続けています。
そう、能面を掛けて 舞台で舞う、あの「能」です。
素人ながら、稽古暦は四半世紀を上回るので それなりのキャリアです。
浜田市内で講師も 行っているのですが、なかなか流行らないのが 悩みのタネ。
みなさんもいっしょにお稽古、いかがですか?(;’∀’)
クドカンと長瀬くんタッグで「能のドラマ」が・・・
新型コロナウイルスが 社会的に 猛威を振るった 令和初頭。
能楽をはじめ、舞台芸能は 戦後以来とも言われる、とんでもない苦戦を 強いられました。
何しろ お客さんが 入れられない。
お弟子さんとの 対面のお稽古も ままならない。
私も 師匠とは Skypeを使ったお稽古に 切り替わりました。
まさに 青息吐息の日々。
そんな中、2021年第1半期。ビッグニュースが 業界に 飛び込んでまいりました。
なんとジャニーズ事務所と 宮藤官九郎氏が タッグを組んで、能楽のドラマが TBS系列で 放映されるというのです。
名付けて『俺の家の話』
※公式の動画のURLを掲示してあります。著作権の問題はありません。
内容には 介護・認知症・遺言etcも てんこ盛り
話の導入部は 次のようなものでした。
- 能楽の宗家(=家元;西田敏行さん)が加齢に伴い 一時危篤に陥る。
- 介護ヘルパーとして 宗家に接近してきた”さくらちゃん”(戸田恵梨香さん)は、後妻業の噂の絶えない 妙齢の美女。
- そこへ 実家を心配し、愛するプロレスを引退して 宗家継承を再度志した長男・”ブリザード寿”(長瀬智也さん)が 帰ってくるが・・・
- 子ども達の心配は、さくらちゃんの思惑と 老いらくの恋に耽溺する(?)宗家の 遺言の行く末。
というもの。
それまでの「○○殺人事件」などの 2時間サスペンスにしか 取り上げられて来なかったことを思うと、思わず感動してしまいました。
興味深かったのが、能楽師の設定が 妙にリアルだったこと。
家元だって、別にお金持ちじゃない、ということを 踏み込んで 書いていたことには 驚きました。
もちろん、能面や装束は 文化財級のもの。舞台を備える 都内の広大な敷地も 相当な評価額でしょう。
ですが、そのようなものが おいそれと換価処分できないのは、みなさんのご想像に難くないと 思います(^-^;
しかし 意外に甘かった 法律系の監修
私がここでドラマ『俺の家の話』を取り上げたのは、認知症や遺言など、業務に関係する場面と能がクロスしたからです。
しかし。
能楽方面の監修は 結構しっかりしていたのに、法律関係のシーンが「おやおや?」と思うシーンがいくつか。
一番ギョッとしたのが、さくらちゃんの過去回想シーンで「パートナーの遺言書を代筆していた」場面です。
これは、
これは・・・
完全に、アウト・・・
法律上の規定がある『遺言』には、一定の「お作法」があります。
そのうちの一つとして 他人に代筆させると、遺言書そのものが「無効になってしまう」のですね。
その回想シーンでは、かつてのパートナーは 口述で さくらちゃんに 代筆させていました。
おそらく衰弱していて、自分では筆を取ることが できない状況だったのでしょう。
ですが、自分の意思伝達は しっかりできたわけです。
この場合に 有効な遺言書を 作成する方法はひとつ。
公証人の力を借りて『公正証書遺言』を つくればOK。
詳しい作り方などは、また別の機会にお知らせしますが、とりあえず今回は
「代筆、ダメ、ゼッタイ」だけを 記憶してもらえればと思います。
余談
余談ですが、宗家役を演じた 西田敏行さんは、若いころに「伝説の能役者」観世寿夫先生に 謡を習ったという経歴が。
ですから ただ一人、ドラマの中で 謡の鮮やかさが プロ並みに際立っていたというエピソード。
いつまでも お元気でいらしてほしい 役者さんです。
『俺の家の話』は、折につけ、また話題に出すことがあると思います。