ブログ

自宅で遺言書発見!でも、ちょっと待って!

「法務局に預ける制度」が出来る前の 遺言書について想像すると、本当に 隠し場所に 困っただろうと 察します。

上手に隠しすぎると、もしかしたら 発見してもらえないかもしれない。

あまり露骨な場所に隠すと、改ざんされるかもしれない。

何より、自分が生きているうちに 家族に見つかると、何だか恥ずかしい・・・

自分自身に置き換えても、さてどこに保存しようかと 悩みます。

考え付くのは、難しめの場所に 隠しておいて、いよいよ末期を悟った場合に 家族に教える・・・ことでしょうか。

うまくいけば良いですが、いきなり 意識を失うことだって あるわけで、我ながら あまり良い作戦とは言えませんね。

 

いろいろな遺言書の制度が 最近改まってきています。

ですが、制度改正以前につくられた遺言書も、当然に有効です。

仮に、ご家族のおばあちゃんが 亡くなったとして、お葬式の準備中に 和だんすから 遺言書が出てきたとしましょう。

 

古式ゆかしく 和紙の封筒に入れられ、表には達筆な手跡で『遺言書』と墨痕鮮やかに 書かれています。

裏面は しっかり封印され、封筒の継ぎ目部分には 立派な印が 三か所も。

これを発見した次男は、仏間の親族のもとに 慌てて駆け込みました。

少しざわめく 遺族一同。

長男の発案で、ここでさっそく 開封の儀・・・

 

とはいかないのです。

何度もブログで書いていますが、遺言書の最大のポイントは「改ざんされていないこと」です。

あくまでも 本人の 意思が反映されていることが 最も大事。

ですから、開封には厳密な取り扱いが必要で、これは遺族の手で行ってはならないのです。

 

検認―家庭裁判所におけるオフィシャルな手続き

では 自筆の遺言書を 発見したらどうするか。

この場合は、故人の 最後の住所地を管轄する 家庭裁判所に 持ち込まないといけません。

そこで「検認」の申立てという作業を行うことになります。

検認とは、遺言書の形状や 日付など 必要事項の有無などを、ある意味 証拠保全する作業 です。

そこまでしてようやく、遺言書の内容に 踏み込めるというもの。

罰則もあり、検認の手続きを経ないで 開封してしまうと、5万円の過料が課されるペナルティ付きです。

だから、遺言を発見した場合は くれぐれも慎重に 取り扱ってください。

 

しかし煩雑な検認

検認を申し立てて、すぐに目の前で オープンにしてくれるのであれば問題ないのですが・・・

実は、検認は 申し立ててから完了するまで、月をまたぐことも 珍しくないのです。

そうすると、遺産のなかに大きな借金など、相続放棄を検討するような内容が 含まれていた場合は慌てます。

3か月という タイムリミットが 迫っているからです。

ですので、すでに遺言書をしたためた方。

これから書こうとお考えの方。

できれば検認不要で便利な法務局で保管してもらいましょう。


余談:『俺の家の話』のなかの遺言

記念すべき第1回のブログで紹介したTBS系テレビドラマ『俺の家の話』。

能楽界で一番大きな家柄「観山流宗家」の継承者は誰になるのか、というのが忘れられがちな本作のテーマでした(^-^;

最終回の前後で、主人公・寿一(長瀬さん)も、現宗家・寿三郎(西田さん)も大変な状況に置かれるなか・・・

長女・舞(江口のりこさん)が、さくらちゃん(戸田恵梨香さん)と一緒になって、露見した寿三郎さんの遺言をハサミで開封するという暴挙に・・・

しかも、まだ、存命中なのに(笑)

これをやってはいけない、というのは上記ブログのとおりですが、単純に5万円ペナルティだけでなく、後々の手続きに支障をきたしかねないという観点から留意いただければと思います。

 

さて、遺言の中身のうち、「観山流宗家の後継は〇〇とする」という文言が末尾に書かれていたわけです。

少し思うのは、宗家という身分は、果たして相続財産の対象になるのか?という疑念。

家屋敷や面に装束の所有権は、どうでしょう?

公益財団法人の所有物にしている場合も多いと思います。

流派は、あくまでも芸の系統で作られる任意団体であって、宗家というのは法律面で見ると、単にシンボリックな存在に過ぎないような?

能のテキスト「謡本」の著作権ですら、財産の目録に落とし込まないと大騒ぎになりそうな予感が・・・(;’∀’)

とにかく、物心両面でさまざまな財産・利権等があることだけは疑いようのない「宗家」という立場。

自筆証書遺言では、作成するの無理ですね・・・

関連記事

ページ上部へ戻る